世界

FVIとの協力関係の中で、海外パートナー団体が行っているプロジェクトをご紹介します。

006 南アジア バングラデシュ

抑圧された人々、ダリットたちの尊厳回復プログラム 南アジア インド 北部 最貧構想としてあえいでいるダリットの人々。自信と尊厳を失っている彼らと関わり。全ての人を等しく大切にするという愛の世界観によって次世代の人々を育成するラムスラットさんたちの働きを紹介します。

2016年7月

テロの悲劇を越えて、活動協力3年目の報告

2016年7月2日(土)日本時間未明、バングラデシュ時間では3時間前の1日午後9時半過ぎ、首都ダッカの瀟洒(しょうしゃ)なレストランでテロの悲劇は起こった。21世紀に世界ですっかり普通になった通信手段、インターネットを介し新手の呼びかけで、世界の若者を巻き込む過激派組織「イスラム国」の誘いの魔の手に、バングラデシュの若者がついに捕えられてしまったのだ。戦闘員としてリクルートされ、一般外国人の集まりを無差別に襲撃のターゲットにした、バングラデシュでは前代未聞の出来事だった。

「イスラム国」が登場した2年前、「イスラム教徒が多数のバングラデシュでもいずれ、若者の一部が、原理主義社会樹立を目指す過激思想の指導者たちに幻惑され、戦闘員やテロリストに仕立て上げられてしまう」という危惧を深く感じた。

国民の多数が極貧に喘いでいた20数年前からバングラデシュに関わってきた者として、「今、関わらなければ、いつ関わる?」と後押しされたように思え、現地のパートナー団体と協力を始めたのだった。

今回の悲劇では、格差が広がるバングラデシュで貧困層に限らず、富裕層の若者までもが「命を破壊する」戦闘員にリクルートされるという新しい局面が来ていたことに衝撃を覚えた。2年前から始めた協力関係が、ますます、その重要性を増し加えているように思える。

バングラデシュで新しい生き方を歩み始めた人々が隣人を包括的に愛する実践に生き、地域の核となるように研修を施し、その人々が励ましあう場を提供する現地パートナー団体と「声なき者の友」の輪が協力を始めて3年目になる。

この研修には、大学生や大学卒業者、そして貧しい家庭出身で高1ぐらいの学力レベルの双方の人々が、集中した学びにやってくる。
新しい生き方は、富裕層にも貧困層のどちらにも欠かせないものなのだ。

昨年の参加者の一人は、次のように自分が変えられ続けていることを語ってくれた。「これまでの自分は、人と意見が違うと相手に対して声を荒げていました。この研修に通ううちに、忍耐を持って自分と意見が異なる人々と話し合い続けることの大切さをだいぶ体得するようになりました。『新しい生き方』は、私に、より深い洞察力と知恵を与えてくれたように思います。そのような知恵を、生活の中で出会う人たちに分かち合いたいと、もっと思うようになりました」。


バングラデシュの状況に精通する現地団体のパートナー代表がこの時代に最も必要なものだと提案し、昨年初めて協力、開催された「サーバント・リーダシップ・セミナー」が2016年も開催された。在学生とこのセミナーに関心を寄せた人々が参加した。

高等教育を受けることができるようになった女性が増える中で、地域社会や組織の中で指導者としての役割を果たせるように、女性にも参加が広く呼びかけられ、昨年以上に女性たちが参加した。昨年、参加して「自分を差し出して仕える」ことに目を開かれ、ぜひ、自分の変化を今回の参加者に知らせたいと今回、参加してくれた女性はこう語った。

「私は自分が暮らす地域社会の人々に全然、関心がありませんでした。昨年、このセミナーに参加して、私の心に変化が起こりました。周囲に暮らす人で貧しい人たちや病気になった人たちのことが、心にかかるようになったのです。関心を持って、できることをするようになりました。持っているものを分かち合ったり、薬代を渡したりするようになったのです。彼らの家に出かけ話すうちに、彼らの回復のために祈る願いが生まれたら心から祈るようになりました。人々の心が失望から喜びに変えられるのを見ることが、私の喜びになったのです」。

また、昨年のセミナー参加者の一人が、このようなメッセージを寄せてくれた。「地域社会に目を向けて人々のために何かを始めてみると、新しい喜びが私に与えられるようになりました。人々との交わりの意味が深まり、心から協力を通して、私の心にも、関わった人々の中にも平安が訪れるようになったのです。お互いに大切にしあうとき、地域社会が信頼と希望の場に変化していくように思います。それを始めるのが、仕える指導者の役割だと思えるようになりました。」

 命を奪うことで自らの理想を実現しようとするテロが吹き荒れるときに、他者の命のために「別の生き方」を選ぶ人たちが静かに起こされている。こうして、社会に小さな希望の芽が育っていくのだろう。華々しくはないので、ニュースにはならないけれども、地域社会で命が輝くように「別の生き方」を生き始める現地の人々の選択を励ます地道な協力が、この時代の隣人としての大切な役割であることをあらためて感じている。

 
ご協力される皆さまへ

この働きにご協力の思いが与えられた方々は下記メールアドレスの「声なき者の友」の輪までご連絡ください。