世界

FVIとの協力関係の中で、海外パートナー団体が行っているプロジェクトをご紹介します。

004 東アフリカ エチオピア・アジスアベバ

抑圧された人々、ダリットたちの尊厳回復プログラム 南アジア インド 北部 最貧構想としてあえいでいるダリットの人々。自信と尊厳を失っている彼らと関わり。全ての人を等しく大切にするという愛の世界観によって次世代の人々を育成するラムスラットさんたちの働きを紹介します。

世代を超えた夢のストーリー:エチオピア 第2段階(2016~18年)

次世代に隣人愛を広める祈りへの応答

「声なき者の友」の輪がエチオピアで理念を共有するハーベスト・エチオピアの代表デメラシュさんと協力を始めて6年。
20年近く前、デメラシュさんが助言をしたことがきっかけで、仲間と2ドルを出し合って手に入れたバナナで、ストリートチルドレンの支援を始めたギザチュウさんを紹介してもらって6年間、協力してきました。今は、大きな現地NGOに成長しています。
»報告2 ストリート・チルドレン・生活者の自立への総合的な回復と予防を目指して

 昨年10月、デメラシュさんから私たちに緊急のメールが届きました。「20年来、『国に広がる真の変革』を祈り願ってきました。この祈りに大きく近づく機会が与えられたので、今まで協力してくださった日本のあなたたちにぜひ、力になってほしいのです。」と。それは、今まで、デメラシュさんが何人もの若者たちに影響を与えて始まった種まきプロジェクトの「隣人愛による変革~夢のストーリー」のような考えと実践が、より多くの次世代の若者に伝えられ、エチオピア全国に広がる可能性がある機会でした。

エチオピアでは近年、大学生が著しい増加を遂げています。その大学生たちのサポート・グループ・スタッフに対して、人のために命をかけたイエスが教えた隣人愛の理念と実践を分かち合う研修会を行っていくものでした。 学生に関わるスタッフが「エチオピアの未来を『真実と隣人愛で満ちる社会』に向けて構築するのは、君たちが身につけた生き方なんだ。」と励まし、経験を分かち合うことを想像するとゾクゾクしてきます。昨年10月、初めてのスタッフ研修を「からし種」を蒔く機会として日本から支援しました。

2か月後、再び、デメラシュさんから連絡がきました。「先日の研修会はとても好評でした。学生サポート・グループ代表から『ぜひ、学生やスタッフのために定期的な研修会を開催し、合わせて私たちの研修担当者を同行して育成してほしい』と正式に依頼されたのです。」と喜びの報告をしてくれました。

 「エチオピア社会の様々な分野に関わっていく学生が、隣人愛実践を自分の生き方として身につけたら、未来の社会には腐敗でなく正義が、妬みや憎しみでなく愛が広がると信じています。」
祈りが答えられ、『夢のストーリー』が広がるときが到来したのです。 こうして2016年、「声なき者の友」の輪として、ハーベスト・エチオピアのデメラシュさんと全国学生サポート・グループへの「種まき」コラボが始まりました。

2016年のエチオピア

エチオピアは30年以上前の大飢饉で、100万人ともいわれる犠牲者を出した国です。20世後半、「極貧の国」の一つとして数えられてきた国でした。

この10年、エチオピアの経済成長率は年平均10%に及んでいます。2016年の首都アジスアベバでは、高層ビル・マンションが次々に建設され、街は郊外へと膨張し、2015年末から市内に電車も通るようになりました。

さらに、2016年10月には、主に中国からの投資で北の隣国ジブチまでの750キロ、アフリカ初の長距離の電化鉄道が敷設され、10時間で結ぶという、人と物資の新しい輸送経路が開通しました。人や物の移動が、格段にスピードアップする新しい時代が進んでいました。

その一方、通りの裏や街はずれにはスラムが散在し、世界を覆う「格差」がエチオピア社会にも浸透していることを感じさせられます。


首都アジスアベバでは高層ビル・マンションの建設が進む


通りの裏や街はずれに散在するスラム

このエチオピアで、今年から「学生倍増」という政府の5か年計画が始まりました。現在、48万人の学生を5年間で100万人にしようとするものです。特に力を入れるのが理科系の増強で、70%の学生を理科系で育成する計画だそうです。
「富をもたらし、国を発展させるのは科学と技術。」20世後半の世界の国々の成功例を吟味し、高等教育では技術、特にITなどの先進技術を身につけさせ、国の経済力を高めたいという考え方が底辺にあるようでした。

「技術力を基にした経済力で、国が発展して豊かになれば、国民はみな幸福になるはず」と経済成長が急速に進む今のエチオピア。その中で、考えるべきことがまだあるのではないかという提案を投げかけているのが、デメラシュさんとその活動に応答した学生サポート・グループの人々のように思います。

彼らが投げかける提案の核は「人とは、技術とスキルを身につけて経済成長に貢献するだけではなく、人との関係、そして正義、公正などの視点を持ち、それを生きるという人格に反映される社会性や、広い知識を得て深い洞察をするという教養・知性を身につけて、すべての側面で総合的に成長するとき、社会に真の貢献ができる」というものです。

この時代に、途上国と言われてきたエチオピアで「真実の人の育成」と格闘を始めたエチオピアの人々に協力する道が開かれたことを思わされます。

エチオピアで、これからの学生たちが体得すべき資質

デメラシュさんに協力要請した学生サポート・グループが、これからのエチオピア社会のために学生たちが体得すべきだと確信したことが、「社会の弱い立場にいる『声なき者』たちをいつも視野に入れて、どの専門分野からも貢献し、自ら隣人愛を生きていくこと」というものでした。

 エチオピア社会では、数%に過ぎない大卒は人々からエリート層とみられ、多くの場合、高給を約束される職種や役職に就きます。卒業生たちが、自らの手を差し伸べて最も弱い人々に関わることを当たり前に生き、弱い人々が支えられるような社会構築に貢献するなら、エチオピアの未来の社会はどれほど輝くことになるでしょうか。そのようなビジョンを真剣に追い求めていました。

 豊富な知識、技術、物事を深く理解する力などを最高レベルで身につける能力を与えられた大学生たちに最も養ってほしいこと。それは、人々に仕え命まで差し出したかた、イエスの姿に日々の歩みで倣ってほしいというものです。自ら隣人愛を実践し、「声なき者」が支えられる社会構築に自分の専門、職種で貢献をしていくような次世代を育てようとする熱意が満ちていました。

そのために、2016年の春からデメレシュさん(写真左)は、学生サポート・グループの研修担当のエドッサさん(右)と研修を共にし、毎月メンタリングの時間を過ごしています。

「声なき者」を生まない社会づくりへの協力~「夢のストーリー」の広がりへ

20世紀の先進国が見落としていた高等教育での資質、それは「生き方」ではないかと思わされます。最も弱い人々に目を向けて、知識を活用し、正義と公正を自分の生き方とする。そのことに気づき始め、知識と生き方のバランスを兼ね備えた次世代育成を目指すエチオピアの人々に、日本から新たな協力を始めることにしたのです。

世界第二位の経済大国になった中国が、エチオピアのみならず、アフリカ全域で社会インフラや高層建物の建設という「ハコモノ」への資金とスキルの投資を次々に行うなかで、戦後70年の経済発展を遂げた日本の私たちは、70年を振り返り、「社会の発展と人の育成の関係」について、何を学んできたのかを問い直す機会をこの協力を通して与えられているように思います。

「人に仕える生き方」を身につける大学卒業生たちがエチオピア社会に散らばっていくとき、エチオピア社会はどのように変わっていくのでしょうか。ワクワクするような夢の実現を思います。
 次世代育成。大切なテーマに協力することで、日本の皆さまと共に様々なことを考えていけたらと願っています。

「世代を超えた夢のストーリー:第二段階」へのお祈り、ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。