世界のビジョナリー

夢を持って「小さな愛の種まき」を実践している、草の根活動家たちを紹介します。

VOL.003 UKRAINE

ラムスラット Ram Surat イエスの弟子として社会の根の課題に取り組み、数億人の下層カーストの人々の間に「よき知らせ」を

1972年、北インドの最下層に生まれたラムスラットさん。尊厳を踏みにじられる体験をしてきた。10代のとき、真実の命を約束されたイエスを知り、従う。2008年、「『神の国』の見方を身につける時、神と人を愛する生き方が始まる」という「声なき者の友の輪」と理念を共にするインドの団体SALTに共鳴し、スタッフになった。草の根の社会変革推進者。

【writer:柳沢 2017.1】

生い立ち ~ダリット層の家系に生まれて~

1972年、北インドの農村でインド伝統社会に根づくカースト制度で人間と見なされない不可触民(ダリット)層の家系に生まれる。少年の時、最上層カーストの家で手伝いをして忘れることができない屈辱を受ける。村にやってきた南インド人宣教師からイエスの話を聞き、イエスを信じる決断。

歩み ~聖書の視点から社会を変革する活動を模索~

高校卒業後4年間、農村でキリスト教伝道に励む。やがて「なぜ、ダリットはイエスを主と受け入れても、以前と変わらずに社会や教会で侮辱され続けるのか」という疑問を抱く。 神学校で聖書を学び、「残念ながら、イエスの教えを既存社会へのチャレンジとして受けとめる弟子づくりがされてこなかった」と気づく。

既存の教会外で、イエスの弟子として社会の根っこの課題に取り組む人々に出会い、聖書の視点から社会を変革する活動を模索。内輪の集団に安住するのでなく、数億人の下層カーストの人々の間に「よき知らせ」が息づくような働きかけに携わる情熱に接する。

インド人の無意識を支配する「世界観」

「声なき者の友」の輪と理念を共有するインドの団体SALTに2008年から参加。インド人の無意識を支配する「世界観」という見方を学ぶ。なぜ、非合理と思える差別を受けながら、多くの人々が声も上げずに黙々と生きるのか。その根源に取り組む見方と方法を深める。統合したアプローチの展開開始。

差別を制度化する経典の教えと聖書が語る人と社会の見方を対比し、人は霊的、身体的、社会的、知的全側面を回復される存在と捉えた宣教の必要を教会で教える。
また、西洋キリスト教の衣から脱皮するために、19~20世紀前半に聖書の人間観を土台に貧困層教育や人権運動を行ったインド人改革者たちの実践を地域のイベントで紹介し続けた。祈りの中で出会った、とある郡のキショル牧師とパートナーになり、2010年後半から「声なき者の友の輪」と尊厳回復の働きを推進。

5年を経て、この見方を実践に移した教会リーダー達は「人との関係性が変えられないなら、『良き知らせ」以外の何かにまだ囚われていることがはっきり判った。」と語る。

キショル牧師は郡内の他の教会の牧師と連絡を取り始め、自分たちが変えられたことを伝え、聖書を土台にした小さなネットワークが始まる。

ラム・スラットさんの情熱を通して伝えられたことをキショル牧師はこう語る。「教会の人々の変化をみて、これを自分たちだけのものにしておいてよいだろうかという思いが強くなった。だから、郡の教会全体に広げることを提案した。この研修に参加することで神が最も変えて下さったのは私!」


根深い課題が山積するインド。
自分を尊厳を踏みにじった制度化された「人の尊厳の破壊」に立ち向かうラム・スラットさんの人生は、「無事」とは正反対の試練と出会いの中で主が働いてくださっていることを証ししている。